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弁護士コラム

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不動産投資・損害賠償

空き室リスクの説明義務違反を認めた例(全国初!?)

東京高判令和元年9月26日:形だけの「確認書」では免れない業者の注意義務

2020.03.04

空き室リスクの説明義務違反を認めた初めての裁判例と思われ、高裁判断も出ており、非常に参考になりますので、ご紹介いたします。

事案の概要

学校教師である購入者が、投資用マンション販売業者の勧誘を受け、大部分をローンでマンション2室を購入しました。しかしその後、1室が空室となり賃料収入が途絶えたことでローン負担が困難となり、やむなく売却。購入額を下回る転売となったため、販売業者に対し、説明義務違反を理由として不法行為に基づく損害賠償を請求しました。

裁判所の判断

一審(東京地判平成31年4月17日):説明義務違反を認定
購入者に投資経験がなく自己資金も僅かであった点に着目。こうした属性の者に対して多額のローンを負担させて勧誘する際は、空室・家賃滞納・価格下落・金利上昇等の各リスクを分かりやすく説明すべき注意義務があるとし、業者側の義務違反を認めました。

控訴審(東京高判令和元年9月26日):業者側の主張を退ける
業者は「告知書兼確認書(リスクを記載した書面)」を示して説明したと主張しましたが、高裁はこれを認めませんでした。不適切な具体的計算式等で投資判断を誤らせたことは明らかであり、一般的・抽象的な説明を並べた書面は「説明義務違反を問われないために体裁を整えただけの書面」に過ぎないと断じました。

【過失相殺について】
ただし、購入者が学校教師であり一定の社会経験を有していることや、書面の記載から危険性を認識する可能性はあったこと等を理由に、4割の過失相殺がなされています。

今回の判決は、業者が用意する「定型的な確認書」に署名させていれば責任を免れるという実務の慣習に、司法がNOを突きつけた形となります。不動産投資に際しては、目先の収支シミュレーションだけでなく、客観的なリスク説明がなされているかを冷静に判断する必要があります。