不動産売買・建築紛争
増し積み擁壁と説明義務違反
宅地造成の瑕疵と、仲介業者が負うべき法的な説明責任について
2020.03.05
取引対象となる土地に擁壁がある場合、注意が必要です。特に「増し積み擁壁」の危険性については意識しておくことが大切です。
【増積(ましづみ)擁壁とは】
有効宅地の増加を目的として、既存擁壁の上にブロックを増し積みして、かつ、法面の上に盛り土することが典型例です。東京都の安全指針などでも、その危険性が指摘されています。
増し積み擁壁では、既存擁壁において想定されていない以下のリスクが生じます。
- ① 荷重の増加:増し積み擁壁自体及び盛り土による圧力
- ② 水圧の影響:雨天時の水圧加算(特に水抜き穴の機能不全時)
- ③ 接合部の脆弱性:既存擁壁と増し積み部の接合耐久性不足
説明義務違反が認められた主な裁判例
擁壁に関連して、売主や仲介業者の責任が認められた代表的な事例をご紹介します。
- ① 東京都崖条例違反の説明漏れ(東京地裁 平28.11.18)
- 仲介業者が建物が東京都崖条例に違反している事実を説明しなかったとして、条例違反解消のために要した擁壁設置費用約2,082万円の損害賠償を命じられた例。
- ② 安全性説明義務違反(東京地裁 平18.9.15)
- 擁壁の安全性についての不説明が信義則上の説明義務違反にあたるとし、売買代金の20%相当額(836万円)の賠償を命じられた例。
- ③ 告知義務と善管注意義務違反(東京高裁 平12.10.26)
- 県条例等の規制を十分に告知せず、土地利用が可能であるかのような誤解を与える見積書を交付したとして、仲介業者に約1,174万円の賠償を命じた例。
- ④ 造成工事未了の説明義務(東京高裁 昭57.4.28)
- 宅地造成工事規制区域内において、検査済証の交付がなされていない事実を説明しなかった媒介業者に対し、約2,505万円の支払いを命じた例。
擁壁のある物件の取引では、単なる目視だけでなく、法令適合性や過去の造成履歴を精査することが不可欠です。当事務所では弁護士・建築士のダブルライセンスを活かし、こうした高度な技術的判断を伴う不動産トラブルの解決に注力しています。