建築紛争・建物明渡
建物明渡請求訴訟における耐震診断の話
ラーメン構造に対する第1次診断法の適用と証拠評価の注意点
2020.03.08
阪神・淡路大震災では、昭和56年の耐震基準が厳格化される以前に建築された建物の倒壊が顕著であったとされています。その後も新潟中越地震、東日本大震災、熊本地震等、地震被害が頻回に発生しています。
そのため、既存建築物の耐震診断が重要になってきますが、平成31年1月1日付け国住指第3107号「建築物の耐震診断及び耐震改修に関する技術上の指針に係る認定について(技術的助言)」では、重要な注記がなされています。
【技術的助言の要旨】
「第1次診断法は、壁の多い中低層の鉄筋コンクリート造及び鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物を対象として……耐震性を確保していることを確認するための簡便な方法であり、壁の多い中低層の……建築物以外の建築物に対しては、第1次診断法により適切に耐震性を判断することができない」
「第1次診断法は、壁の多い中低層の鉄筋コンクリート造及び鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物を対象として……耐震性を確保していることを確認するための簡便な方法であり、壁の多い中低層の……建築物以外の建築物に対しては、第1次診断法により適切に耐震性を判断することができない」
要するに、壁式構造ではない、(柱梁で構造を構成している)ラーメン構造のRCやSRCについては、第1次診断法ではなく、第2次診断法以上が適切であるということです。
明渡請求訴訟における「診断手法」の恣意的な利用
建物明渡請求訴訟において、地震で賃貸建物が倒壊する危険があるとして、ラーメン構造の建物について「第1次診断法」による診断結果を証拠として提出してくるオーナーがよくいます。
それといいますのは、ラーメン構造の建築物について第1次診断法で診断した場合、建物の耐震性が過少評価された数値(低いIs値など)が出てきやすいため、倒壊の危険を主張したいオーナー側にとって都合が良いからです。
【ここがポイント】
そもそもラーメン構造の建築物について第1次診断法を採用することは、技術的な指針に照らして適切ではありません。相手方から提出された耐震診断書が、その建物の構造形式に対して妥当な診断手法を選択しているか否か、建物明渡請求訴訟では厳密に検証する必要があります。
当事務所では、弁護士としての法的な観点はもちろん、建築士としての技術的な観点からも、こうした診断結果の妥当性を精査し、適正な解決を目指しています。