建築紛争・隣地境界
建築基準法63条と民法234条
隣地境界線からの距離制限における特則と紛争リスクについて
2021.06.28
建築士試験においても、建築基準法63条は頻出でよく問われます。しかし、関連性を有する民法234条については、特段問われることはありません。そのため、建築士はあまり民法234条を意識していない方がいらっしゃるかもしれません。
境界線付近の建築制限イメージ
簡単にいってしまうと、建築基準法63条は、一定の条件下では、隣地境界に接して外壁を設置できるとしており、かたや民法234条は、建築物の築造は、境界線から50cm離さないといけないというものです。完全に矛盾してしまっているので、当然のことながら、両者の関係性を巡って、トラブルがおきてしまいます。
この点、平成元年9月19日第三小法廷判決は、民法が適用されると判断した原審大阪高裁判決を破棄し、
「建築基準法65条は、防火地域又は準防火地域内にある外壁が耐火構造の建築物について、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる旨規定しているが、これは、同条所定の建築物に限り、その建物については民法234条1項の規定の適用が排除される旨を定めたものと解するのが相当である。」
と指摘し、建築基準法63条が民法234条の特則であるとの判断を下しました。※注:当時の条文番号は65条
もっとも、この理屈からすると、防火又は準防火地域で、隣地境界線沿いにRC造を先に建築した者勝ち、つまり、早い者勝ちの様相がでて、また、工事の際の隣地使用を巡る関連した紛争も誘発されることとなります。最高裁で伊藤正巳裁判官が反対意見を論じたのも、こうした問題意識があろうかと思います。
【建築基準法】(隣地境界線に接する外壁)
第六十三条 防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。
【民法】(境界線付近の建築の制限)
第二百三十四条 建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。
2 前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から一年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。