不動産・建築・立ち退き
不当勧誘による不動産売却時のトラブル
売主にはクーリング・オフがない?消費者契約法による対抗策
不動産業者による不当勧誘を契機とする不動産売却によって、不動産オーナーが損害を被る被害は後を絶ちません。
長時間の勧誘、相場に関する不適切な説明、自宅に押し掛けるといったあの手この手により、ついつい大切な所有不動産を廉価で売却してしまうケースは枚挙に暇ありません。
不動産売却には「クーリング・オフ」がない
この点、「宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約」に関して、消費者が宅地建物を事務所等以外の場所で購入する場合には、宅建業法第37条の2に定める申し込みの撤回等(いわゆる「クーリング・オフ」)ができます。
しかし、消費者が不動産を売却する場合にはクーリング・オフが認められていません。
また、宅地建物取引には特定商取引法の適用もされませんので、同法のクーリング・オフも認められません。
消費者契約法などの適用検討
こうしたトラブルに際しては、民法の一般条項である詐欺(民法96条)、錯誤(民法95条)、公序良俗(民法90条)の他、消費者契約法の適用可能性も検討する必要があります。
消費者契約法では、「消費者契約」とは「消費者と事業者との間で締結される契約」をいい、「消費者」とは「個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)」と定義されており、取消事由が法定されています(法4条1項乃至4項)。
規制される事業者の不当な行為の類型として、以下の類型が設けられています。
①消費者を誤認させる行為類型
- (ⅰ) 不実告知(法4条1項1号)
- (ⅱ) 断定的判断の提供(法4条1項2号)
- (ⅲ) 不利益事実の不告知(法4条3項)
②消費者を困惑させる行為類型
- (ⅰ) 不退去(法4条3項1号)
- (ⅱ) 退去妨害(法4条3項2号)
- (ⅲ) 社会生活上の経験不足の不当な利用~不安を煽る告知(法4条3項3号)
- (ⅳ) 社会生活上の経験不足の不当な利用~恋愛感情等に乗じた人間関係の濫用(法4条3項4号)
- (ⅴ) 加齢又は心身の故障による判断力の低下の不当な利用(法4条3項5号)
- (ⅵ) 霊感等による知見を用いた告知(法4条3項6号)
- (ⅶ) 契約締結前に債務の内容を実施(法4条3項7号)
- (ⅷ) 契約を目指した事業活動の実施による損失補償請求等の告知(法4条3項8号)
③過量販売、次々販売など(法4条4項)の類型
注意点と準用
【時効に注意】
取消権の行使について、追認できる時から1年間の消滅時効期間と、契約締結時から5年の除斥期間を定めた規定がありますので注意が必要です(法7条)。
【仲介業者にも適用】
なお、媒介の委託を受けた宅建業者等の行為にも消費者契約法4条が準用されます(法5条1項)。
参考資料
独立行政法人国民生活センター「高齢者の自宅の売却トラブルに注意」(令和3年6月24日)
参考:消費者契約法(抜粋)
第四条 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一 重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認
二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。 当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認
2 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意又は重大な過失によって告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。
3 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一 当該事業者に対し、当該消費者が、その住居又はその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しないこと。
二 当該事業者が当該消費者契約の締結について勧誘をしている場所から当該消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から当該消費者を退去させないこと。
(※以下略)