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弁護士コラム

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不動産・建築・立ち退き

暴利行為の公序良俗違反を認めた裁判例について

高齢者や判断能力低下につけこむ悪質な不動産取引の無効事例

相手方の無知等につけこんで社会通念上適正水準の価格と比して著しく過大な利益を得ようとする暴利行為は、公序良俗に違反するとの評価を受ける場合があります。

今回は、不動産取引において「暴利行為」と認定され、契約が無効となった具体的な裁判例をご紹介します。

1. 大阪高判平成21年8月25日(市場価格の6割での買取)

市場価格6670万円の土地につき、その6割程度で買い取ったことが暴利行為にあたるとされた事例です(別冊判タNo32.40頁)。

当該事案では、以下の事情が考慮されました。

  • 売主は認知症と妹の死をきっかけとする長期間の不安状態のために事理弁識能力が著しく低下していた
  • 相手に受容的な態度を取る他人から言われるがままに、自己に有利不利を問わず、迎合的に行動する傾向があった
  • 周囲から孤立しがちな生活状況の中で、相手方らから親切にされ、同人らに迎合的な対応をする状態にあった
  • 相手方らは、これらのことを知悉して十分に利用しながら、売主を本件売買締結に誘い込んだ

2. 東京高判平成30年3月15日(評価額の半額以下での売買)

評価額が少なくとも1億3130万円以上であった不動産につき、6000万円という半額以下の価格で売買された事例です。

裁判所は、通常の合理的判断能力を有する人間であればおよそ行わない内容の取引であるとして、公序良俗違反を認めました。

著しく不合理な契約内容
売主は店舗兼住宅及び貸地の売却に伴い、収入源を全て失い生活基盤を喪失。
さらに、現実に受け取った売買代金は皆無(借入金相殺のみ)で、手元に残るものは全くないという過酷な内容でした。
悪質な勧誘背景
売主の認知症による判断能力低下に加え、「競売を申し立てる」といった威圧的な言動があったこと、買主がその状況を利用して4500万円もの転売利益を得ていたことなどが考慮されました。

その他の参考裁判例

③東京高判昭和58年9月5日

生活の面倒をみている立場を利用し、売主の覚せい剤注射により精神の平静が失われた状態に乗じて契約締結させた事案。

④東京地判昭和60年10月9日

高齢者が所有する旅館を極めて低額で売買。買主は複数の架空抵当権を設定し、競売手続きを実行して所有権を取得しようと画策した悪質な事例。

⑤東京地判平成5年8月30日

借地権付建物売買において、売買代金2000万円が客観的価格の6分の1以下であり、諸費用を差し引くと売主の手元には代金の1割未満しか残らなかった事例。

⑥高松高判平成15年3月27日

代金が評価額の4割未満。買主側の者が売主の行動を監視し、親族と連絡を取ることができないようにした事例。

⑦東京地判平成19年4月27日

高齢者で意思能力に不安があることを知りながら、売主の周囲を買主の関係者で取り囲んだ状態で、契約内容をほとんど説明せずに契約させた事例。

【参考資料】東京高判平成30年3月15日 判旨抜粋

「…本件第一売買契約に基づく代金として控訴人が現実に受け取った現金は皆無であり、代金支払と同視できるのは…本件売買代金の一割弱、本件各不動産の客観的交換価値の四・五パーセント弱に過ぎない。
…これは、経済的取引としての合理性を著しく欠くものであり、通常の合理的な判断能力を有する人間であれば、およそ行わないような内容の取引といわざるを得ない。
…Aは、一連の取引により実質的に六〇〇〇万円以上の莫大な利益を得ていることになるが、これは、本件第一売買契約により控訴人が得た利益、あるいは失った利益と比べて、著しく均衡を失しているものである。」