不動産法務・賃料評価・建築紛争
継続賃料の鑑定~共益費を含める必要あり
不動産鑑定評価基準と実務指針から紐解く「実質賃料」の正当な算定方法
賃料増減額請求の案件では、継続賃料が鑑定評価の対象となります。原則として、継続賃料には「共益費」も含めて算定することが適切です。しかし、未だに裁判所の選任する鑑定人が共益費を除外して算定してしまうミスが見受けられるため、留意が必要です。
鑑定人が共益費を除外するリスクを回避するには、入口段階で裁判所を介し、鑑定人に対して「共益費を含めて鑑定するように」と予め釘を刺しておくことが極めて重要と考えられます。
継続賃料に共益費を含めるべき主な論拠
① 実質賃料の定義
「実質賃料とは……付加使用料、共益費等の名目で支払われる場合があるが、これらのうちには実質的に賃料に相当する部分が含まれている場合があることに留意する必要がある。」(不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節)
② 積算賃料の必要諸経費としての整合性
新規賃料の積算法において、必要諸経費には「維持管理費」が含まれます。共益費は維持管理費に相当するため、これを除外すると計算の連続性が失われます。
【専門的知見:差額配分法における計算の歪曲】
共益費を賃料に含めず差額配分法を適用した場合、新規賃料額(共益費込)から控除する実際賃料額(共益費不含)が不当に低くなり、結果として差額配分額が不合理に増額されてしまいます。これは鑑定評価の論理的破綻を意味します。
共益費を賃料に含めず差額配分法を適用した場合、新規賃料額(共益費込)から控除する実際賃料額(共益費不含)が不当に低くなり、結果として差額配分額が不合理に増額されてしまいます。これは鑑定評価の論理的破綻を意味します。
③ 実務指針および市場慣行
日本不動産鑑定士協会連合会の指針においても、「共益費込みの賃料水準で分析するのが一般的」であると明記されています。
関連する主要な裁判例
- 東京地判平成3年6月24日(金判897号36頁)
- 東京地判令和3年10月13日
- 東京地判令和4年2月16日
- 東京地判令和5年3月31日
専門家による指摘
30年以上にわたり裁判所鑑定委員を務めた田原拓治不動産鑑定士は、共益費を無視した鑑定は「専門家として致命的な重過失に相当する誤りである」と断じられています。
当事務所では、弁護士と二級建築士の視点から、鑑定評価書の妥当性を厳密に検証し、適正な賃料形成をサポートいたします。